イギリス妊婦→育児生活

初妊娠、イングランド北西部在住。イギリス人のリスと日本人のポンの妊婦生活日記です。予定日まであと100日のところで、皆さんはお腹に指輪を乗せたおしゃれな写真を上げているなか、そんなことが流行っているとも知らず私はブログを始めました。2月6日に無事第一子を出産し、イギリスにて子育てに奔走中。

084: 欧米ではメジャーな無痛分娩?本当にそうか調べてみた! UK妊婦生活 予定日まであと17日

よくある質問シリーズ-4
「海外(欧米)では無痛分娩メジャーなんでしょー?」「無痛分娩するの?」よく聞かれます。

「海外」や「欧米」という用語は広い地域を指すもので、無痛分娩が一般的かどうかは、国によって様々だとは思っています。それに、世界と言えば、人口の半分はアジアだし、その次にアフリカ。欧米はそれほど人口比では思っているほど多くありません。そう考えると世界では無痛分娩はメジャーではないと思うのですが、実際どうなのかよくわからないので、自分で調べてみました。

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無痛分娩とは

経腟分娩時に使用される、硬膜外麻酔(epidural)と脊椎くも膜下麻酔(Spinal anesthesia)を含む痛み緩和の局所麻酔。経腟分娩ではない、帝王切開の時もこの硬膜外麻酔が使われますが、投与量が異なります。

世界の無痛分娩統計

海外では無痛分娩がメジャーだと思われがちですが、「海外」「欧米」という用語は広いもので、国によって様々です。

統計によると(年はデータ収集時の年、あるいは論文/記事発行時)

日本6.1%以下(2016)
http://www.jaog.or.jp/wp/wp-content/uploads/2017/12/20171213_2.pdf

アメリ73.1% (from 2015)
この集計は帝王切開をのぞいた、麻酔の使用歴がはっきりしており、単胎出産のうち脊椎管内への麻酔を使用した妊婦の割合を無痛分娩としている。
United States State-Level Variation in the Use of Neuraxial Analgesia During Labor for Pregnant Women | Anesthesiology | JAMA Network Open | JAMA Network
割合は州によってだいぶ異なり36.6%から80.1%、無痛分娩を選ぶかどうかは、田舎の方が行える病院が少ないことがわかる。
他にも、人種や保険の種類、という理由によりバラツキがあるよう。

英国:約 30% (2014 and 2018)
この集計は帝王切開をのぞいた、脊椎管内への麻酔を使用した妊婦の割合を無痛分娩としている。
イギリスで無痛分娩を選んでいる妊婦さんの割合は皆さんが思っている「欧米」のイメージよりは少ないのではないのでしょうか?イギリスNHSの場合、出産は無料ですし、無痛分娩も追加料金なしに選べます。アメリカのように地域によって選べないということもありません。
https://www.npeu.ox.ac.uk/downloads/files/reports/Safely%20delivered%20NMS%202014.pdf
https://www.cqc.org.uk/sites/default/files/20190424_mat18_statisticalrelease.pdf
全体では60%が普通経腟分娩(normal vaginal birth)、26%が帝王切開(Caesarean section: C-section)、9%が鉗子分娩(forceps)、6%が吸引分娩(ventouse)です。

フランス83.8% (2014 and 2018)
母乳育児は52.2%(2016)に減少してきています。
Trends in perinatal health in metropolitan France from 1995 to 2016: Results from the French National Perinatal Surveys

スウェーデン40.1% (2010)
この集計は帝王切開をのぞいた、単胎出産のうち脊椎管内への麻酔を使用した妊婦の割合を無痛分娩としている。
肥満の女性はやや高い割合でこの無痛分娩を利用していました。
https://obgyn.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.3109/00016340903508668

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ノルウェー24〜47% (2013)
この集計は帝王切開をのぞいた、単胎出産のうち脊椎管内への麻酔を使用した妊婦の割合を無痛分娩としている。
非移民女性で31%、移民女性で24〜47%、移民が30%を超えているノルウェーでは出身国によって無痛分娩を選ぶかの頻度がかなり異なる。
Epidural analgesia for labour pain in nulliparous women in Norway in relation to maternal country of birth and migration related factors - ScienceDirect

いかがですか?こちらに記載した国は日本よりは明らかに無痛分娩を選んでいる割合は多いですが、メジャーと言えるほど多くはないと思います。

欧米ではない国ではどうでしょうか?

南アフリカ5.16% (2014-2015)これは1つの州立病院での結果なので、国全体の統計ではありません。
https://www.tandfonline.com/doi/pdf/10.1080/22201181.2017.1401773

アジア
中国10%以下(2019)
China to Encourage More Natural Births with Epidurals - Caixin Global

オセアニア
オーストラリア36%(2016)
How are decisions made to access a planned epidural in labour? Midwife-woman interactions in antenatal consultations - ScienceDirect

他にも世界にはたくさんの国々があり調べたかったのですが、新しい論文がうまく見つけられませんでした。どなたか見つけてくださいましたら、追記いたしますので教えてください。
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本当に欧米で無痛分娩はメジャーなのか?

上記に記載した通り、無痛分娩の使用率は国によってかなり異なり、私の意見としては「海外」や「欧米」と大きく括ってしまって言えるほど、無痛分娩はメジャーなわけではないと思います。今回、比較した国ではアメリカとフランスでは一般的(メジャーである)と言えると思いますが、ほかの国では全て50%以下でした。他の国でどうなのかは、興味があれば、実際論文などをご自身で調べて見て下さい。

私が住んでいる英国とフランスはすごく距離的にも近く、イギリスは無痛分娩に対する問題は、麻酔師も医療費も病院もクリアーしているにもかかわらず、この差(30%と83.8%)があります。
フランスのことはわかりませんが、イギリスでは医師や助産師は、無痛分娩について相談すると利点と欠点を述べてくれて、自分や家族と話し合って決めてくださいとアドバイスをしてくださり、オススメも否定もどちらもしません。当日には麻酔師による考えられる副作用などの説明もあるようです。あとはNHSのホームページなどにも記載があります。
Epidural - NHS
youtu.be
イギリスは無痛分娩以外にも、ほかの痛み緩和についていろいろオプションがあり、そのため、低い数値になっているのかもしれません。
Pain relief in labour - NHS
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https://www.cqc.org.uk/sites/default/files/20190424_mat18_statisticalrelease.pdfより

おわりに

たしかに、日本で無痛分娩はまだまだメジャーとは言えません。
日本では文化的背景や費用の問題もあるかもしれませんが、麻酔科医が少ないことや無痛分娩が選べる病院が近くにないなど様々な要因があると思います。
日本だけでなく、世界中で誰でも自分や家族が一番だと思う方法で出産できるようになるといいなと思っています

友達によく聞かれるシリーズ過去ブログ
uk-ninpu.hatenablog.com
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本日もここまで読んでくださりありがとうございました。