イギリス妊婦→育児生活

初妊娠、イングランド北西部在住。イギリス人のリスと日本人のポンの妊婦生活日記です。予定日まであと100日のところで、皆さんはお腹に指輪を乗せたおしゃれな写真を上げているなか、そんなことが流行っているとも知らず私はブログを始めました。2月6日に無事第一子を出産し、イギリスにて子育てに奔走中。

086: 側弯症と妊娠、出産の関係を調べてみた UK妊婦生活 予定日まであと15日

私は側弯症(英語ではScoliosis)があります。今日は麻酔医に私の側弯症が出産に影響するかチェックしてもらったので、ブログに書き残したいと思います。

日本語で側弯症に関して、簡単に調べた際には、「妊娠と側弯症」の関係性に関して情報が少なく、また、ほとんどがカイロプラクティックなどのおすすめなどのページしか見つからなかったため、自分で文献を引いたり、学会のホームページを探したりして、側弯症に関して知識を深めました。

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前提として、私の場合は現在、妊娠37週目、側弯症は軽度=手術をしていない側弯症です。
まずは、側弯症の基本から調べました。
ほぼ、日本側弯症学会のホームページからの情報です。すごくわかりやすく記載されていました。また英語で探した論文などと、ほぼ同じことが書かれているのでこのまま引用させていただいております。

側弯症とは

脊柱側弯症

脊柱を正面から見た場合に、左右に曲がっている状態を脊柱側弯症といいます。。弯曲の大きさは、上下で最も傾いている背骨どうしのなす角度 (コブ角)で判断 しますが、この角度が10°以上であるものが側弯症です。

日本側弯症学会のホームページより

つまり、普通の人は、体を正面から見た際に、姿勢を正した場合まっすぐ立っているとおもいますが、脊柱側弯症がある人は、体を見た時に左右に体(脊柱)がクネッとなっているのです。
その左右の振れが大きければステージが高く(重度)になります。ステージが高い人はどちらかの肩が上がっているように見えたりし、重度の方は器具治療や手術を薦められる場合もあります。

後弯症、前弯症

後弯症、前弯症は、脊柱を横から見た場合に、後ろ、あるいは前への弯曲が異常に大きくなった状態をいいます。

日本側弯症学会のホームページより
側弯症は、どんな病気か?|側弯症TOWN(患者向けサイト)|日本側彎症学会

つまり、普通の人は、体を横から見た際に、姿勢を正した場合軽く前後に体が曲がっていてバランスを取っています。後弯症、前弯症がある人は、それぞれその後方あるいは先方への曲がり具合が極端に大きくなっている症状です。

側弯症の発生頻度&診断

角度が10度を超えるものを側弯症と診断される。
発生頻度は10度以上が2-3%、20度以上で0.3-0.5%、30度以上で0.1-0.3%、40度以上は0.1%未満といわれています。1-10度以下の人は、50%まで上ると言われているため、すごく稀な症状と言うわけでもありません。(人は臓器も左右対称に配置されていないため多少は骨も曲がっている。)

多くの場合は思春期あたりに発見され、特発性と診断されることが多いようですが、実際に遺伝子を調べると一部の遺伝も関係していたりするため、遺伝+何かが関連している場合=原因不明の場合は全て「特発性」と診断されることが多いようです。
Scoliosis is partly genetic - Scoliosis World

側弯症の原因

1:特発性側弯症

原因がわからないものであり、全体の80-85%を占める。

  • 年齢による分類

乳児期(男性に多い)、学童期、思春期(女性に多い)に分けられ、発症時期により名前が付けられています。

2:原因がわかっている側弯症

先天性側弯症、神経・筋原性側弯症、神経線維腫症による側弯症、間葉系疾患による側弯症、その他の側弯症があげられます。
詳細は日本側弯症学会のホームページをご確認ください。

側弯症の影響

外見上の異常、心理的負担、ストレス、痛み、神経症状、呼吸器症状があげられます。

側弯症の手術

重度の場合手術が必要な場合(生活に支障が出る場合)があります。しかし、その手術も利点と欠点があるので、医師と家族と相談をして決めるのが良いでしょう。

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側弯症と妊娠&出産の関係

ここからは、妊娠と側弯症の関連性についてかいております。あまり日本語での情報がなかったため、ほぼ科学論文からの引用になります。詳細についてはリンクを貼ってありますので、そちらをご確認ください。

側弯症と妊娠
  • 側弯症人の妊娠のしやすさ

側弯症と妊婦の関係を調べた論文において、側弯症が妊娠をしにくくするという関係性は認められませんでした。
https://europepmc.org/article/med/2948962

  • 側弯症妊婦と腰痛

妊娠の一般的な症状として、腰痛があげられます。妊娠による体重の変化、ホルモンの変化、子宮が大きくなるため(バランス)の変化により腰痛が発生しやすくなるためです。側弯症の人は、もともと首、肩、背中、腰に痛みを伴いやすい人が多く、それに妊娠が重なるとより一層腰痛が起こりやすくなると言われています。実際の研究結果でも、側弯症がない妊婦と比べ、側弯症の妊婦は新たな腰痛が有意にでやすいという結果になっています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7577072/
しかし、他の研究では、腰痛の有無は術歴がある側弯症の有無にかかわらず変わらず、また妊娠の有無でも変わらないという結果も出ているものもありました。
側弯症でかつ手術を伴う人はかなり少ないため、母体数により、有意な差が認められにくいということもあるかもしれません。あと痛みに対しては人それぞれの感覚のため評価しずらいことも考えられます。
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1878875018329292

  • 側弯症と 妊娠期間

側弯症を有する妊婦と側弯症がない妊婦の妊娠期間に有意な差は認められていません。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7577072/
https://journals.lww.com/pedorthopaedics/FullText/2019/07001/The_Natural_History_of_Adolescent_Idiopathic.11.aspx

側弯症と出産

ある研究結果によると、側弯症の妊婦の帝王切開率は変わりませんでした。その代わり、すでに側弯症で脊柱の手術を行っている人は、硬膜外麻酔が行いにくい場合があり、全身麻酔をする頻度は高くなるようです。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7577072/
https://journals.lww.com/pedorthopaedics/FullText/2019/07001/The_Natural_History_of_Adolescent_Idiopathic.11.aspx

しかし、手術を伴う重度の側弯症妊婦に限っては帝王切開率が高いようです。主治医が前もって、帝王切開を薦めることが多いようです。
Pregnancy and delivery in patients with idiopathic scoliosis
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1878875018329292

側弯症と産後
  • 側弯症と産後の腰痛

産後の腰痛に関しても、側弯症を伴う人は腰痛が発生する率が高いという研究結果がありました。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7577072/

  • 側弯症の遺伝

側弯症の発生、進行、先天性関連の遺伝子が多数見つかっているため、両親のどちらかに側弯がある場合は赤ちゃんも専門医に見てもらった方が安心だそうです。
詳細は日本側弯症学会のホームページをご確認ください。

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ポンの側弯症(経験談

側弯度合い

私の場合は、軽度側弯症であり、左右の振は軽く、どちらかというと捻じれているタイプの脊柱側弯症です。

正面から見た場合、大きめの服を着ていればあまり気が付かれないですし、ピタッとしていても人間動いているのであまり気が付かないようで。友達も言うまでは、知らなかったーという人が大抵です。しかし、身体測定など脱いだりした場合は丸わかりなので、中学校の時とかは恥ずかしかった思い出があります。(その時は診断もされていなかったため、なんてアンバランスな体なんだろうと思っているだけでした。)

横から見た場合、健常な人は背骨が前後に軽い波を打っており、バランスをとり、クッションの役割をしているのですが、私の横から見た背骨のレントゲンはほぼまっすぐ。つまり、体に重さなどの負担がかかりやすいようです。

側弯症の診断
  • 小学生

小学生の時プールで泳いでいるときまっすぐ泳いでいるつもりなのにいつも、曲がっていく、まっすぐ走っているのにどっちかに傾いているというのがあったので、おそらく、子供のころから側弯があったのではないかと今となっては思います。(だから小さいころから運動音痴だったんだな。っていまだと側弯症のにしたくなるけど、トッププレーヤーでも側弯の人はいます。)

  • 中学生

中学校の時バスケットボールをやっていて、やけに腰が痛くなり、整形外科に行ったときレントゲンを撮ってもらい、「背骨が奇形だね」普通は四角く映るのに、三角だ。と言われました。あー奇形なんだー。とその時は思っていました。

  • 就職後

また腰が痛くなる時があり整骨院でマッサージをしてもらっているとき、普段から奇形なんでやりすぎないでくださいと言っていたのですが、施術後、立てなくなるほど、めちゃめちゃ悪化したことがあり、これはもう一度整形外科に見てもらった方がいいなと思い、整形外科に行きました。その時ようやく「側弯症だね」と診断してもらいました。原因はわからないけどとりあえず曲がっている。と言われました。その先生は確かに1方向からのレントゲンだと1個目だった骨が三角に見えるけど、よこから見ると通常の四角形に見える、つまりグリっと捻じれているんだねと説明してくれました。曲がっているのは背骨全体ではなく腰と首元の数個ずつの骨で、全体でバランスをとっているから、それほど目立たない軽度の側弯症なんだね。といわれました。この程度なら普通の生活に支障を感じないなら手術は薦めないとその時に言われました。もう大人だけど、側弯症は進行していく場合もあるので5年に1回とか定期的に検査しておいた方がいいよ。といわれました。

  • 渡英後

5年以上たち渡英後また少し、側弯が気になりNHSで診断してもらうことにしました。その時はまずGPに相談し、整形外科医に送られ、整形外科医からレントゲンを撮るように言われ(ここまで約1か月半)、その結果をもってまた整形外科医に診断してもらったのですが(ここまで2か月)レントゲンだけじゃよくわからないからとMRIをすすめられ、MRIを撮ることに(ここまで4か月)、MRIの結果を見てもらうためまた整形外科医と面談し(もちろんいつものように違う先生)、その先生には、レントゲンを2回は撮らないと進行度具合はわからないと言われ(5か月)レントゲンをもう一度、最終的にもう一度整形外科医と面談し(当たり前のように毎回違う先生)、それほど進行はしていないようだね。それにこれくらないら、手術も必要ないといわれました。

日本であれば、1日でレントゲン何枚か撮って終わると思われる検査も、こちらでは自分でいろいろなところに電話して、予約して、診断してもらい、また検査して、結果を確認してもらうのにまた予約して、最終結果をもらうまで結局6か月もかかってしまいました。

NHSはそれぞれ専門性が高いのですが、その代わり、GP、整形外科医、放射線技師、MRIの人の連携に時間がかかるため慣れるまでは、かなりメンタルやられます。

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側弯妊娠と腰痛

私は普段から側弯症があるので座っているときとかも、肩こりや腰痛は健常な人より起こりやすいと思っています。例えば、勉強も手書きで行うと肩こりが異常に起こりやすいですし、腰痛で2-3時間物の映画を続けて座ってみることができないなど。
なので、妊婦になったら余計に腰痛はひどくなると思っておりましたが、初期中期は、意外とそうでもありませんでした。通常でも程度痛みが起こりやすいので、私の場合はそれ以上にあるかと言われれば、そうでもなかった印象です。それよりも妊娠によるつわりなどの症状が勝っていました。
現在、妊娠後期になり、腰痛はひどくなってきた気がしますが、それも妊婦だったら普通のことなのかなとも思っております。
外見上は、お腹が少し左に寄っています。(おそらく側弯症の関係だと思います。)

側弯妊娠と産婦人科

上記に述べたように私は、側弯症と診断されていますが、軽度で今のところ手術や器具は必要ないといわれています。
妊娠が分かった際のアンケート用紙には持病などを書くところがあったので、側弯症(Scoliosis)と書きました。しかしその後、助産師も産婦人科医からも質問されることはしばらくありませんでした。
妊娠20週目に会った産婦人科医の先生はたまたまMaternity noteを隅から隅まで読んでくれて、心臓に不安があるなら心臓外科医、側弯があるなら麻酔科医に調べてもらった方がいいかもしれないね。出産は手術を伴うこともあるので。と言ってくれました。(NHSは自分から聞かないと流されることも多いです。15分単位でしか診察時間もありませんし。。見つけてもらえてラッキーだったのかも)
20wの時に、紹介状を書いてもらい、今日の麻酔外科医との面談にまでに至りました。

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側弯妊婦と麻酔科医

現在37週目+6日目になりやっと、麻酔科医と面談することができました。麻酔科医として側弯症が問題となるのは無痛分娩の際によく行われる、硬膜外麻酔ができるかどうかがポイント。

まず、麻酔科医に、整形外科医にどのような診断を今までされているか聞かれ、上記のような話をし、次に実際に私の背中を触って診てもらいました。
その時に確かに曲がっているけれども骨と骨の間もちゃんと確認できるので、おそらく針を刺してカテーテルも入れられる(つまり、硬膜外麻酔できる)と思うと言われました。
これは試してみることもできないので、当日やってみて、出来なかったら、自然分娩するか、全身麻酔に切り替えるかになる。といわれました。

その後、いろいろな出産時の麻酔や痛み緩和のオプションを教えてくださり、Gas and Air, TENS、レミフェン、硬膜外麻酔についてもリスクなどを含めて丁寧に教えてくださいました。併せて下記のWebsiteもみて、麻酔に関して知識を蓄えておくこともお勧めされました。
Pain relief in labour - NHS
Coping with LabourPains for Mothers

麻酔科医には、どれを選ぶかは家族と相談してくださいと、あとは実際に陣痛が来た時に、自然に産めそうだなと思えば自然分娩もできるし、もう耐えられないと思えば無痛分娩に切り替えることも可能です。そして麻酔科医がやはり、硬膜外にカテーテルを入れるのが難しいようであれば、自然分娩か全身麻酔帝王切開になるので、あまり固執せず、柔軟に対応していくことが心身ともに大切だと思いますよとアドバイスをいただきました。

確かに、友達の小児科医も以前同じことを言っていました。どんな方法になっても、母子ともに健康なのが一番だから、柔軟に対応するのがいいよと。バースプランはプランとして考えて、自分で勉強して希望は考えておいて、あとは当日の自分の気持ちと医師や助産師の判断で決めていこうと思います。

結果的には、硬膜外麻酔(無痛分娩)も選択肢として選ぶことができるという結果で、ホッとしました。実際に使うかはおいておいて、オプションが残されているだけでも安心しました。

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おわりに

38w目前にして、ほぼすべての検査がようやく終了して、安心して午後は眠くなって久しぶりに長い昼寝をしてしまいました。
私の側弯症は軽度であり、手術などはしていないため、参考にならない方もいると思いますが、少しでも誰かの役に立てばいいかなと思います。

また無事に出産した際には、それについて出産レポも書いていきたいと思っています。

今日は側弯症と妊娠に関してでした。どの論文も、側弯症があるからといって、妊娠&出産にそれほど制限があるような結果は無く、赤ちゃんは変わりなく無事に産めるようなので安心しました。(自分でもあまり側弯に関する論文を調べたことがなかったので勉強になりました。)

今日は今までで一番長いブログになってしまいました。
本日もここまで読んでくださりありがとうございました。