イギリス妊婦→育児生活

初妊娠、イングランド北西部在住。イギリス人のリスと日本人のポンの妊婦生活日記です。予定日まであと100日のところで、皆さんはお腹に指輪を乗せたおしゃれな写真を上げているなか、そんなことが流行っているとも知らず私はブログを始めました。2月6日に無事第一子を出産し、イギリスにて子育てに奔走中。

098: 臍帯血(さい帯血)寄付、保管 UK妊婦生活 予定日まであと3日

みなさん臍帯血バンクはご存じでしょうか?

病院でのパンフレットや、たまごクラブ、トツキトオカのアプリを使っている方はAd(広告)で見かけたりしたことがあるかもしれません。
私は仕事の関係で、この分野に関わっているので、この臍帯血の寄付や保管についてなるべくわかりやすくブログに書いていきたいと思います
(詳細に関しては下にリンクを貼ってあるので、最新情報をご自身でご確認ください。)

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臍帯血とは

臍帯血とは、へその緒と胎盤から取れる血液です。
つまり、赤ちゃんの誕生後に胎盤と臍帯(=へその緒)に残る血液です。骨髄に見られるものと同様に、その血液の中に、造血幹細胞(ぞうけつかんさいぼう)がたくさんにあります

臍帯血をどうするの?寄付したり、保管すると役に立つの?

臍帯血にある、造血幹細胞(ぞうけつかんさいぼう)はたくさんの異なる癌、免疫不全、および遺伝性疾患の治療に使用できます

造血幹細胞(ぞうけつかんさいぼう)とは

造血幹細胞(ぞうけつかんさいぼう)英語でHematopoietic Stem Cell: HSC
いろいろな血液(赤血球、白血球など)に分化することが可能な細胞です。
いろいろな疾患(癌、免疫不全、遺伝性疾患などの)患者さんにこの細胞を移植することにより命を助けることができる可能性があります

臍帯血を取るのは痛いの?

赤ちゃんの出産や胎盤の出産は痛みを伴いますが、分娩が終わった後、赤ちゃんから切り離されたへその緒と胎盤から血液を採取するため、臍帯血の採取に関しての痛みは伴いません

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病院での臍帯血採取イメージ。絵心なし。

赤ちゃんのへその緒を取っておけなくなるの?

病院の方針によるかもしれませんが、基本へその緒は取っておけます。へその緒から血液を採取をするといっても、赤ちゃんから切り離された後、へその緒を切り離した部分から採血をします。そのため、赤ちゃん側についているへその緒の一部は赤ちゃんのもとに残ります。通常と変わらず、赤ちゃんから自然に取れるまで、赤ちゃんと共に残るので、保管されたい方は、記念に取っておくことができることが多いと思われます。

赤ちゃんを出産する方ができること

上記にあるように、出産さんをされる際にあかちゃんとお母さんを繋いでいたへその緒+胎盤から取った臍帯血を必要な方へ寄付したり、あるいは家族の将来のために保管したりできます。

臍帯血バンクとは

臍帯血を保管する業者のことを言います。

公的臍帯血バンクとは

白血病などの治療のための移植に用いられる臍帯血を供給する事業者です。臍帯血の採取、調整、保存を行うとともに、患者さんが移植を希望した場合には、その患者さん(第三者)が移植を受ける医療機関へ臍帯血を引き渡す業務を行っています。また臍帯血情報を研究用として希望する研究者に提供しています。

2021年1月現在、厚生労働大臣の許可を受けた公的臍帯血バンク(臍帯血供給事業者)業者は日本国内に6カ所あります

  • 北海道さい帯血バンク
  • 関東甲信越さい帯血バンク
  • 近畿さい帯血バンク
  • 九州さい帯血バンク
  • 中部さい帯血バンク
  • 兵庫さい帯血バンク
臍帯血提供の流れ

1.公的さい帯血バンクと提携している産科施設であるか確認
ご自身が通われている病院が提携病院である場合は可能です。
(出産時に技術者がいない場合にはできない場合もあるかもしれません。)
2.同意書の記入
 移植を受ける機会の公平さを保つため、提供いただいた方でも特別に優遇することができません。さい帯血を提供していただくにあたって、所有権を放棄し、移植を必要とする患者さんのために使用するという同意書に署名をする必要があります。
3.出産と臍帯血の採取
  出産後に、医師や看護師により臍帯血の採血が行われます。提供を希望していた場合であっても、出産時に出血が多かった場合など、臍帯血の採血が不可能であった場合などは、採血ができないので提供もできなくなります。
4.血液検査保存
 お母さん側の血液検査を行います。
5.臍帯血調製→保存
 臍帯血から、造血幹細胞を分離し、液体窒素あるいは超低温フリーザーに保管します。
6.最終チェック
 数か月後に、健康状態をチェックします。
7.患者さんのもとへ
 10年以内に適合した方が見つかれば、移植に使われる可能性があります。

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病院からラボに送られた臍帯血から幹細胞を処理するイメージ。絵心なし。

プライベート臍帯血バンクとは

本人や家族の病気の将来の治療のために、白血病などに利用することができます。また現在では医療技術としては確立されていない再生医療などに将来利用する場合に備えて、契約を結び、費用を支払うことにより、臍帯血を保存してもらう事業者です。

2021年1月現在、厚生労働大臣の許可を受けた民間臍帯血バンク(臍帯血プライベートバンク)業者は日本国内に2カ所あります

将来のための臍帯血保管の流れ

1.ご自身が通われている病院が臍帯血採取可能か病院に確認。
2.資料請求、申し込みと事前準備
 ご自身が希望する会社へ資料請求を行い、契約書を記入すると、採血キットが贈られてくる。
3.出産と臍帯血の採取
 キットを産院に持っていき、出産後に、医師や看護師により臍帯血の採血が行われます。提供を希望していた場合であっても、出産時に出血が多かった場合など、臍帯血の採血が不可能であった場合などは、採血ができないので保管もできなくなります。その場合には料金は発生しないようです。
4.血液検査保存
 お母さん側の血液検査を行います。(HIVなどにかかっていた場合は使用できません)
5.臍帯血調製→保存
 臍帯血から、造血幹細胞を分離し、液体窒素あるいは超低温フリーザーに保管します。
6.契約更新の案内
 契約によって更新が必要になり、その際に延長を希望する際には追加の保管料金が発生します。
7.幹細胞利用
 産まれたお子さんが幹細胞を必要な疾患になってしまった場合、連絡をとり、利用することが可能です。

料金は高いの?

出産費用は通常と同様に掛かりますが、公的臍帯血バンクへの臍帯血の寄付に関する料金は基本的に無料です。臍帯血の運搬費用など一旦かかるようですが、加入の医療保険に療養費として申請すると、後日返金されます。(2021年1月26日)修正しました。今費用は移植者が一旦支払う費用の用で、提供者はかからないそうです。

ご自身あるいはご家族のために臍帯血を保管したいという場合は、民間臍帯血バンクに依頼することになるので、有料です
2021年1月現在:ステムセル研究所の場合
19万5千円/1年間保管
24万円/10年間保管
29万円/20年間保管

アイルの場合
初期費用2万+処置料14万+保管費用(1年ごと1万で延長可能)

イギリスでは臍帯血(Umbilical cord blood)ドネーション(寄付)はポピュラー?

イギリスの場合も提供ができる病院が日本よりさらに限られているためそれほどポピュラーではありません。
また、現在はCOVID-19の影響もあり、提供が中断されている場合ありますので、Maternity Clinicの先生に確認をしてみてください。

現在(2021年1月25日)、イギリスでの公的な臍帯血寄付を受け付けているの病院は3か所のみ

  • University College
  • St. George’s
  • Luton & Dunstable

で出産を予定されている方のみ対象となります。

イギリスも日本と同じく、公的であれば無償で提供ができ、民間であれば有料で個人的に保管することが可能です。
Register to donate - Cord Blood Bank - NHS Blood and Transplant

おわりに

世の中には、造血幹細胞移植を伴う治療を行わなければいけない人がたくさんいます。実際に白血病に現在なっている私の知り合いや友達がいます。血液に関するものなので、血液型のように、抗体型も一致しないと拒否反応がでてしまったりしてしまいます。そのため、たくさんの方々からの提供が必要となります。(ただ施設や技術者にもキャパシティーの問題があるのでそこが難しいところ)

そして、私自身は仕事でこのような難病と呼ばれる分野の治療に関わるお手伝いをさせていただいているので、ぜひ私が出産する際には幹細胞を寄付提供したいなと思っていたのですが、残念ながら私が産むNHSの病院では採血及び保管ができないようです

皆さんの周りでもできる病院は多くはないかもしれませんが、難しい病気にかかっている方の移植のために、興味だけでも持っていただけたら幸いです。
この分野の研究がこれからもっと進み、キャパシティーが増え、治療方法が増え、移植や遺伝子治療再生医療治療がどこでも、誰でも身近にできるようになることを願っています。
本日もここまで読んでくださりありがとうございました。

2021年2月13日追記

☟臍帯血バンク(寄付について)の実体験ブログを追記しました。
uk-ninpu.hatenablog.com